本を読んで考えたこと

無性に何か書き残したくなる本に時々出会う。その記録。

教育について考えるヒント(岡本薫『日本を滅ぼす教育論議』)

 発行がほぼ10年前なので古くなっている情報や考え方も多かったが、教育に携わる者として忘れてはいけないと思わされる視点もあった。備忘録としてまとめて書き付け。

 

①「目的」「目標」をはっきりさせる必要がある

 これは前から薄々感じてはいたこと。「生きる力」「世界でトップレベルの学力」「人間力」「豊かな心」など耳障りの良い言葉は、一見目標のようで、ただのスローガンである。具体的にどうしたいのか、そのために何をすればいいのかといった話になると、専門家でも口ごもってしまうという。

 さらに、大目標、中目標、小目標というように、目標もそのレベルと順序を考えなければいけないという当たり前のことに改めて気付かされた。

 

②日本特有の班活動や掃除当番は強みでもある

 最近では組体操が問題視されて、集団行動は悪だとか必要ないとか言われているけど、順番に班長を回して一つの班というまとまりで活動したり、給食当番や掃除当番といった輪番制の仕事を経験したりといった一種の集団行動が、役に立つこともある。例えば阪神淡路大震災で大勢が避難していた中で、暴動や略奪など大きな事件が起こらなかったことは、小学校からの班活動や当番制のおかげでもあると言える。当たり前に役割分担をして順番にリーダーを務めて、という動き方が当たり前にできない国民もいるだろうとのこと。運動会や学芸会などの特別活動も含めて、日本の教育から削減されようとすると外国から「なんで削るんだ」「自国の教育の利点がわかってない」と批判されるらしい。

 自分は集団行動がたしかに好きじゃなかったので、組体操問題で日本のそういうとこやっぱ嫌いだなーと思ってしまったけど、この本を読んだらなーんだいいところもあるんじゃん、と少し軌道修正できた気がする。

 

③「外国からみた日本」が好きなのは今に始まったことじゃない

 ここ数年で外国人はニッポン大好き!論調が目立ち始め、私はてっきりここ数年での変化だと思っていたけど、昔からジョーク(※)にされるくらい日本は外からの目を気にしていたらしい。知らなかった。だから最近の論調を必要以上に問題視して叩くこともないんだなぁと気付かされた。立ち位置が近すぎた。もっと離れてみたら、論点がずれていることが分かった。

 ※「象に関する本を書けと言われて、ドイツ人は詳細な『象の解剖図集』を作り、フランス人は『象の愛とセックスについて』という本を書いたが、日本人は『象は日本人をどう思っているか?』という本を書いた」

 

④日本は「資源が豊富な大国」にもなり得る

 資源が乏しい小国、というイメージは教育によって刷り込まれているだけで、見方によっては森林資源は豊富だし面積だってヨーロッパの国々と比べたらそこまで小さくもない、という話。内田樹が『日本の身体』の中でも憂慮していた考え方の問題。「日本はしょぼくて弱い小国だ」と教え続けるのも、「日本はすごくて強い大国だ」と教え続けるのも、どちらも良くない。

 

⑤学校は入ることより進級・卒業を難しくするべき

 前から言われていることで、日本の大学は入るのが難しく卒業するのが簡単。これは解決すべき問題。でもこれを解決したかったら、そもそも「大学の勉強は就職や社会に出てからの生活に役に立たない」という考えが蔓延っている問題から解決していかなければならなくて、かなりゴールは遠い。

 私は大学時代かなり日常的に勉強させられる国際系の学部で、周りも勉強はスイッチ入れて真面目にやる雰囲気だったので非常に有意義な学生生活だった。大学時代=モラトリアム=遊びという図式が当たり前なのを放っておいていいのかとずっと思ってきた。学ぶ内容そのものももちろんだが、学び方や活かし方まできちんと秩序立てて組まれたカリキュラムを強化することが必要で、そんなん小学校教育でも目指されていることなのに大学でも結局達成できてないという現状。

 日本の大学はとにかくオワッテル、故に就活も引きずられてオワッテル、と悲しくなるので、大学に限らず学校の存在意義を根本的に見つめ直す偉い人が増えたらいいなぁと思う。

 

 以上、人任せにせず、人のせいにせず、自分自身もこれから考え続けてアクションを起こしていきたいポイントを整理しました。

日本を滅ぼす教育論議 (講談社現代新書)

日本を滅ぼす教育論議 (講談社現代新書)