本を読んで考えたこと

無性に何か書き残したくなる本に時々出会う。その記録。

ソロー『森の生活(上)』まとめ

終始共感の嵐で、示唆に富んだ1冊だったので、引用しながら自分なりの道筋を探る。長くなりそうなので上下巻に分けて。まずは上巻から。

 

①「進歩」「目標達成」など疑い深い言葉に注意。

世のなかには疑いようのない進歩ばかりがあるわけではないのだ。(略)現代の発明は、いつもわれわれの注意をたいせつな事柄から逸らしてしまうきれいなおもちゃだ。こうしたものは、改善されない目的を達成するための改善された手段にすぎない。(p96)

 

②持ち物に足元をすくわれ「立ち往生」している人間

彼は持ち物にくびきでつながれたまま、なんとか前へ進もうと、もがいているように見えるだろう。私に言わせれば、立ち往生している人間とは、自分だけはどうにか節穴や門を通り抜けたものの、橇に積んだ家具がひっかかって動けなくなってしまった人間のことである。身だしなみがよく、キリッとした、しかも屈託なさそうで、いますぐにも大活躍をはじめそうにみえる男が、自分の「家具」には保険がかかっているとかいないとか話しているのを聞くと、私は同情を禁じ得なくなってしまう。(p120)

一見頭が良くて有能で人が集まっているような人ほどこういうパターンが多い印象。一時期流行った断捨離も、果たして人々の価値観ごと変えられたのか。

 

③毎日自分の生活をしっかり見つめて真剣に生きることの喜び

われわれは機械的な手段に頼ることなく、どんな深い眠りについているときでもわれわれを見捨てないあの夜明けへの無限の期待によって、ふたたび目覚めることを、また、いつまでも目覚めていることを学ばなくてはならない。意識的な努力によって自分の生活を高める能力が、まちがいなく人間にはそなわっているという事実ほど、われわれを奮起させてくれるものはあるまい。(略)その日の生活を質的に高めることこそ、最高の芸術にほかならない。(p162)

さすがにインターネットに支配された資本主義時代で、忙しく慌ただしい日本でいきなりこの境地に立つことは難しそう。だけどあらゆるモノやしがらみから解放されて孤独になれている瞬間の希望みたいなものは、ソロー時代のアメリカと同じように感じられるはず。時間と精神的余裕をなんとか持ち続けたい。

 

④「クールジャパン」「Youが喜んで来てくれるニッポン」「2020オリンピック開催国」の錯覚、穴

われわれは、自分たちが19世紀の人間であることや、自分の国がどこよりも急速に進歩していることを自慢している。けれども、考えてみると、この村などはみずからの文化を高めるために、ほとんどなにひとつしていないではないか。(p193)

今の日本に向かって言われてるのかと思った。

 

⑤いわゆるウェイ系、パリピ、キラキラ女子などに対する違和感、反感があるとしたら…

楽しみをそとの世界に求めて、社交界や劇場におもむくひとびとに比べると、私の暮らし方には少なくともひとつの強みがあった。つまり、自分の暮らしそのものが楽しみであり、いつも新鮮さを失わなかったことだ。それはつぎつぎと場面が変わる、終わりのないドラマのようなものだった。(p204)

「少なくともひとつの」と言ってるところがいいなと思った。自己充足できることは強みだけど、それだけでは変人隠遁者扱いされるし、社会的に社交的に生きることが難しくなる(時にはそれも必要なのに)。あまりにも頑固に孤独を演じていると、戻れなくなって結局自分を苦しめることになると思う。バランスが大切。

 

⑥本気を出すと"無我の境地"で"我"を強く意識できる

われわれは思索にふけるとき、健全な意味でわれを忘れることができる。頭脳を意識的に働かせることによって、行為と行為の結果から離れて立つことができるわけだ。すると、善も悪もいっさいのものが、奔流のようにわれわれの傍らを通りすぎてゆく。(略)私は、自分を人間的存在として知っているにすぎない。いわば思考と感情の舞台としてである。また、私には他人だけでなく自分自身からも離れて立つことができるような、ある種の二重性が存在することも意識している。(p243)

昔はよくこの二重性が許されないものだと思って苦しんだ。どっちが本当の自分か、と。時に二重どころか三重にも四重にもなる。その自己矛盾をまるごと受け入れるには、頭で思い込ませるだけでは力が足りず、時間が必要だった。自分は、ないけど、ある。

 

 ソローの思考に共通していることは、すべてから隔離された一人の時間に生まれたということと、規則正しい生活から生まれたということ。深い思索と規則正しい生活を両立させられたら強い。ソローの人生観、ライフスタイルそのものに鼓舞される。

下巻に続く。。

 

 

森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)

森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)