本を読んで考えたこと

無性に何か書き残したくなる本に時々出会う。その記録。

今年の読書を振り返る(生き物のことばかり考えていた話)

 2017年は、ダーウィンとの出会いから始まった。お正月に映画『レヴェナント』を観て、人類と自然の関わりを太古まで遡って見つめ直したいと思ったのがきっかけで、長らく本棚に積んであった『種の起源』を手に取った。これが、私の生命観、自然観を大きく変える(というか広げる)ことになった第一歩。

種の起源(上) (光文社古典新訳文庫)

種の起源(上) (光文社古典新訳文庫)

 

 

小さいころから動物は好きで、動物園や水族館にも時々足を運んだりしていたけど、人類誕生前は全部ひとくくりで「昔」と言っちゃうレベルの生命史観だった。でも心のどこかにバートンの絵本『せいめいのれきし』は根付いていて、いつかああいう世界(人類誕生前)にも入っていきたいなぁと思いを馳せてはいた。

「歴史」といわれてクリアに思い描けるのはせいぜい二千年くらいだった。「二千年前まで」と「それより前」でざっくり分かれていただけだった私の脳内が、突如として「カンブリア紀」「白亜紀」「ジュラ紀」みたいにして億単位の年数が拓けて伸びていったのだから、ある意味、爆発。長さにしたら何倍だ。ゼロが何個もつく。

 そして好奇心の赴くまま読み始めた生命史関連の本は、読めば読むほど未知の世界を広げてくれたし、そんな世界の解像度を少しずつ上げてくれた。特に分かりやすくまとまっていたのは以下の2冊。何十億年を俯瞰するのに助かる。

〈生きた化石〉生命40億年史 (筑摩選書)

〈生きた化石〉生命40億年史 (筑摩選書)

 
現代思想 2017年8月臨時増刊号 総特集◎恐竜 ―古生物研究最前線―

現代思想 2017年8月臨時増刊号 総特集◎恐竜 ―古生物研究最前線―

 

 「現代思想」は、読み漁った生命史関連の本で得た知識がコンパクトに整理されていたし、世界中の研究者たちが日々頭と体を動かしまくって仮説を立て検証を繰り返し、私のようなド素人にもロマンを分けてくれていることに感謝を覚えたので、永久保存版ということで本棚に残すことにした。

 

さて、生命がどう進化して多様化しているかを追いかけるのと同時に、「人間をその中にどう位置づけるか」「”私”はどう自然と向き合って生きるか」を新たな視点で考えるようになった。地球の歴史、生命の歴史から考えると人類は新参者もいいとこで、進化のツリーの先っぽのちっぽけな点に過ぎない。その中のさらにちっぽけな一人の私。背景が千年単位から億年単位まで広がった私の中で、人類(自分)の存在感は相対的に限りなくゼロに近づき、自然観を否応無くリセットさせられた。

小さい頃好きだった『シートン動物記』や『ファーブル昆虫記』も今読み返したら面白いんだろうなぁと思いつつ、ノンフィクションやエッセイ、思想書など色々あさってみて、特に印象的だった本を挙げていく。

 

フンボルトの冒険 自然という〈生命の網〉の発明

フンボルトの冒険 自然という〈生命の網〉の発明

 

フンボルトは、ダーウィンにも影響を与えたという。自分の足で世界中を探索しまくり、生き物を集めまくり、記録しまくった人。彼はもっともっと現代の人々に知られるべき先駆者だと思った。超偉大。「生き物はみんなつながっているんだ、共存しているんだ」みたいなことは今では常識のように語られるけど、その原点はこの人が作ったと言っても過言ではない。ドラマチックな1冊だった。

  

森は考える――人間的なるものを超えた人類学

森は考える――人間的なるものを超えた人類学

 

生命史への興味とは全く別の次元で哲学や人類学も追いかけていたら、いつの間にかつながっていた。  ”私”は人間の肉体をもって思考しているけど、他の動植物も同じようにそれぞれの質量をもってそれぞれの世界を生きている。サバンナを駆け巡るシマウマやライオン、電車の中に迷い込んできた蛾、家のゴミ箱にわいてくるコバエ、突き詰めると同じ。私と同じ。って考える私……みたいなことを一人で考えると堂々巡りになるところを、『森は考える』を読んだらめちゃめちゃ全てがしっくりきた。

 

東京のゴリゴリの都会で生活してると、こういう思考回路の人にはあまり出会わないけど、ダーウィン、ユクスキュル、ヘンリー・ソローなんかは読んでいて仲間としか思えなかった。 

ミミズと土 (平凡社ライブラリー)

ミミズと土 (平凡社ライブラリー)

 
動物の環境と内的世界

動物の環境と内的世界

 
ヘンリー・ソロー 野生の学舎

ヘンリー・ソロー 野生の学舎

 

ソローを研究している今福龍太先生と出会えたことも、今年のビッグイベントのひとつ。自分と同じ現代を生きる人で、こんなに共感して尊敬できる人は少ない。ちょうど今年は今福先生の著作集『パルティータ』シリーズも出版されたので、そちらも読み進めている。 

 

こんな感じで、生き物のことばかり考えて過ごした1年だった。生命愛が止まらなくて1人で上野動物園に行ったりもした。この「生命愛」ってつまり、「自分がこの世からいなくなっても生命の輪は依然として存在し続ける」 ことへの感謝や喜びみたいなもので、日常の社会生活も楽になった。lonlinessというよりsolitude的な孤独感をゆるりと纏って、来年も色んな本を読みたい。

最後に、そんな私が死んだら、火葬とか土葬とかじゃなくただそっと森の中に置いておいてほしいなーと強く思った1冊。一番うまく自然に還れる気がしませんか。

森の探偵―無人カメラがとらえた日本の自然

森の探偵―無人カメラがとらえた日本の自然